コラム
(概要)
平屋建ての住まいは、昔ながらの日本家屋のようで魅力がありますね。しかし「平屋建ては高い」とお考えの方も多いようです。平屋建てと2階建ての建築費用とくらべてみましょう。
(本文)
平屋建ては高い?
平屋建ての家屋は、日本家屋の原点と言えるでしょう。
私たちをひきつける懐かしさがあり、洗練された美しさがあります。木造の平屋建ては、ことに魅力がありますね。庭に季節を感じさせる木々や花々があるとなおさら魅力が際立ちます。平屋建ての家屋には、わたしたち日本人の血のなかにある「暮らし」や「住まい」に対する感受性のエッセンスが集約されているのでしょう。
ところで、そうした平屋建てを望まれる多くの方が漠然と「平屋建ては高い」と思っているようです。ハウスメーカーの営業の方々も「平屋建ては高いですよ」とおっしゃることが多いようです。しかし、一口に「平屋建ては高い」とは言えないのです。
家には坪面積、坪単価があります。正方形のサイコロを2つ用意して、机の上に一方は縦に2つ積み(2階建て)、もう一方は横に2つ(平屋建て)並べてみましょう。この場合、縦に2つ積んだものものより、横に並べたもののほうが机に接する面積は大きくなりますね。
これが「平屋建ては高い」と言われる理由の一つです。机に接する面は家の基礎にあたります。つまり、平屋建ては基礎部分の面積が大きく、その分だけ建築費がかさむ、というわけです。
また、サイコロを上から見れば、家の屋根にあたる部分の面積も、縦に2つ積んだものより、横に並べたもののほうが大きいですね。基礎と屋根部分の広さ、これは建築コストに大きな影響を与えますから、どうしても「平屋建ては高い」というイメージができてしまうわけです。
しかし、縦に2つ積んだサイコロ、つまり、2階建ての場合、上と下の行き来はどうするのでしょう? 当然、階段が必要になります。ところが、この階段部分は案外スペースをとるのです。
階段とホールスペースで4~5坪は見ないといけないでしょう。仮に坪単価50万円としたなら、50万円×4坪=200万円。このお金は、平屋建てには必要がないものです。
また、家は一生のものです。時間がたてば、外壁の補修などメンテナンスの必要が出てきます。2階建ての場合、外壁補修には足場を組んで作業することになります。足場がいらない平屋建てとは費用が大きく違ってきます。
こうしたことを考えると「平屋建て=高い」と言うのは、漠然としたイメージから来るものと言えるのです。
2階建てと平屋で迷った際の判断基準
2階建てと平屋建て、どちらにしようかなかなか判断がつかない場合、ぜひお考えいただきたいのは「家は生涯住むもの」ということです。
最近、よく見かけるようになった言葉に「減築」があります。
たとえば、お子さんたちが独立し、家には親御さんたちだけが住むようになった際、住み勝手の良さ、防犯対策等を考え、2階建ての家を1階建てにする際などに使われる言葉です。平屋建てでも、住居部分を縮小する際に用いられます。
いずれも老後の暮らしを考えて行うものですが、「減築」の場合、2階建てより平屋建てのほうが工事を少なく済ますことができます。
独立したお子さんがお孫さんを連れて同居するようなり、「増築」の必要が出た場合でも、2階建てより平屋建てのほうが設計・工事等でより融通がきくでしょう。
また「家」は、いまお話ししたような必要性に応えるものであればいいとは言えません。やすらぎや安心、愛着があってこそだと思います。
平屋建てに魅力を感じ、魅力ある家で、自分らしい生涯、自分らしい人生を送りたいとお考えであれば、その思いを大切になさることをおすすめします。
ハウスメーカーに見る平屋建てと2階建ての価格差
「家を建てよう」とお考えになられたなら、まず、ハウスメーカーのパンフレットをご覧になる方が多いと思います。
しかし、おそらくパンフレットに掲載される家屋は、ほとんどが2階建て、もしくは、3階建てで、平屋建ての写真はあまりご覧にならないと思います。
その理由は、2階建てと平屋建てとでは需要に差があるからです。そして、2階建てと平屋建ての価格差が出る理由もここにあります。
ハウスメーカーは、大量受注、大量生産を基本にしています。そのため、部材の長さ・大きさ等に規格を設け、その規格で家を建てます。部材等も大量に発注して、建築コストを下げる仕組みを完成させています。そのため、2階建て・3階建てを希望される方は、建築費用面で恩恵を受けることになります。
しかし、もともと需要の少ない平屋建ての場合、ハウスメーカーが作り上げたシステムに合致しない面も多く、その分、建築コスト削減の恩恵を受けることがでないことになります。
おそらく、ハウスメーカーのパンフレットをご覧になった方の多くが「平屋建ては高い」と感じられると思いますが、その理由は、いま申し上げたところにあるのです。