コラム
(概要)
1階に住む平屋建てには「外からの視線をどう遮るか」、また、「採光面をどうするか」という問題があります。しかし、それは工夫次第です。今回は視線や採光について見ていきましょう。
外の視線をさえぎる工夫
平屋建ての問題点として、通りなどから「家の中を見られてしまうのではないか」というプライバシーに関する点が挙げられます。確かに、暮らしやすさということを考えれば大きな問題です。家はゆっくり、気がねなく休みたい場所です。外の視線が気になっては心理的に大きな負担になってしまいます。
「サザエさん」の家は木造平屋建てでなんと5LDK。延べ床面積は推定30坪ということです。当然、サザエさんたちも「外からの視線」が気になるところでしょうが、サザエさんの家には家を囲む塀があり、要所要所に植栽が施され、上手にプライバシーを守っています。工夫次第で平屋建てでも十分、プライバシーを守ることはできるのです。
家を建てる際、建物本体の以外の工事、家の外側の工事を外構工事といいます。家の周りにブロック塀などを設けることなどを指しますが、家を囲う=「外」への「構え」、ということで「外構」と言います。
この外構と植栽を組み合わせて、魅力的でプライバシーも守られた家にしたいものです。
家の周囲に囲いを施す際、ブロック塀では少し味気ないかもしれません。また、サザエさんの家のような隙間のない板塀より、適度に隙間をもたせた木製フェンスはどうでしょう?
木の風合いが家と庭を引き立てますし、植栽と上手に組み合わせることで、外からの視線をやわらかくさえぎることができます。隣家や道路からの視線に対して、常緑樹やコニファー(針葉樹)を植えて目隠しにしているご家庭も多いですね。
フェンスはメーカーがさまざまな種類を出しています。木製のフェンスと同じ風合いを持ちながら、長寿命な樹脂製フェンスもいいですね。腐食の心配が少なく、メンテナンスの必要がありません。
また、庭に樹木を配するときは、高木、低木を組み合わせて高低差を作ると、庭全体が引き締まります。
光を取り入れる工夫
建築基準法では、居室には必ず窓を設けなくてはならないとされています。しかし、家の北側などは窓を設けても十分な光を得ることができない場合もあります。
平屋建ての良さを活かして、家の中に光を取り入れましょう。
工夫の一つは「トップライト」です。たとえば北向きの部屋の屋根、あるいは、屋根に近い部分に採光のための窓を設けると、家の中にやわらかな光を呼び込むことができます。明るさと同時に解放感も得られる工夫です。
ただ、この「トップライト」をフィックス(固定)式にするか開閉式にするかはちょっと問題です。
北向きの部屋で、すでに窓はあるものの明るさが足りないという場合は、フィックス(固定)式でも問題はないとおもいますが、換気も意識しなくてはならない場所であれば開閉式のほうがいいでしょう。
開閉式のトップライトには、手動で開閉するもの、スイッチやリモコンで開閉できるものなどメーカーが使い勝手のよさを考えたものを出しています。
この他、出窓を設けるのもいいアイディアです。出窓は外に張り出す形になっていますから、ガラス面が多くなり、その分光を取り入れる効果があります。
しかし、いずれも家が建ってから新たに作るのは費用がかさみます。設計の段階で採光についても十分、確認することをおすすめします。
平屋建てには日本家屋の知恵がつまっています
京都の昔ながらの家「京町屋」は「ウナギの寝床」と言われ、間口が狭く、奥に細く長くのびています。
この京町屋の通りに面した部分には「表格子」と呼ばれる格子が設けられています。これは風通しや採光を考えて取り入れられたものですが、同時に、外から家の中を見えにくくするという役割も兼ねています。風通し、採光、プライバシー……。一石二鳥ではなく、一石三鳥ですね。もちろん機能面ばかりではなく、表格子を備えた家は見た目にも美しく魅力的です。
また、京町家には、坪庭と呼ばれる庭があります。自然のある暮しを求める京都人になくてはならない庭ですが、この庭も観賞のためだけではなく、採光と通風を確保する役割を担っています。
京都は三方を山に囲まれ、寒暖の差が激しいところですが、京都の人々は自然環境に対応する工夫を昔から重ねてきたと言えるでしょう。
日本ならではの平屋建てには、古き良き日本の暮らしの知恵がつまっています。
たとえば、庇(ひさし)もその一つです。庇は、雨水を直接壁にあてないという役割を持っています。庇を設けることで壁を傷めず、家を長持ちさせるという工夫です。