コラム
平屋に1.5階(中二階)を作りローコストを実現する建築が人気
(概要)
平屋建ての良さを活かしながら、さらに利便性と解放感をもたらす「中2階」を組み入れたスタイルが人気になっています。人気の秘密を探ってみましょう。
中2階を作る目的
平屋建ての良さは生活空間がワンフロアに収まるシンプルさにあります。
しかもマンションのように、上下左右に他の家族が暮らす空間がある、ということもなく、独立した「我が家」のやすらぎがあります。平屋建てに人気が集まる理由かと思いますが、新しい流れとして、平屋建てに「中2階」を設けるご家庭が増えています。
この「中2階」は「ロフト」をイメージするとわかりやすいでしょう。
2階建てのお宅でも、この「ロフト」をお子さんの寝場所や勉強部屋、あるいは、収納スペースに活用していらっしゃるケースが多くみられます。
では、平屋建てにある「中二階(ロフト)」はどのようなものでしょう。「中2階」を持つ平屋建ての例をいくつかご紹介しましょう。
(1)
最も人気があるのは、リビングに「中2階」を設ける例です。リビングと緩やかなつながりを
持ちつつ、その空間だけが特別の空間、たとえば自分の趣味に浸る空間になるなどの点が人気の理由ですが、自分だけの世界でありつつ、リビングにいる家族の様子を知ることができ、会話
も楽しむことができます。
(2)
また、段差がない点が平屋建ての魅力の一つですが、そこに唯一段差のある「中2階」を作る。そして、その「中2階」をお客さまを泊めるゲストルームとして使うという例もあります。
仕切りの壁はなくとも、一段上にあるということで他の空間と違う印象があり、お客さま様のプライバ シーを守ることつながります。
(3)
3つめの例は、「中2階」を収納スペースとして使う例です。暮らしの中で「収納」は大きな
問題です。
とくに季節によって使う、使わないが出る物を収納できる場所があると、暮らしやすさの点で大きなメリットになります。
2階建てとの違い
「中2階」は、建築基準法では「小屋物置等」と言います。
そして、建築基準法に定められた「小屋物置等」は、天井高が1.4m以下、直下の階の床面積の2分の1の面積のものとなっています。
これに該当しない場合、「小屋物置等」ではなく「2階」と見なされます。逆に言えば、天井高1.4m以下を守っていれば「小屋物置等」があっても2階建てではないわけです。
ところで、平屋建てに「中2階」を設けると、目線に高低差が生まれ、家の中を実際の床面積よりも広く感じるという効果があります。
にもかかわらず、家族はワンフロアにいる。この点も1階2階がはっきりと別空間になっている2階建てとは違う点で、平屋建ての「中2階」特有の魅力と言えるでしょう。
また、すべての生活空間が同一平面上にある平屋建てに「中2階」を設けると、独特の解放感が生まれます。この点も大きな魅力になっていると言えるでしょう。
ただ、これは平屋建て、2階建て問わず言えることですが、「中2階(ロフト)」は屋根の下にあります。そのため、断熱についてあらかじめ十分な配慮が必要になります。
「ロフトを作ったものの、夏は暑くてとてもいることができない」という声を耳にすることがありますが、多くは断熱への対策が不十分であることがその原因になっているようです。また、エアコンなどを設置しておくのも良いでしょう。
夏の直射日光を浴びた屋根は高熱を持ちますから、十分な配慮が必要になるのです。
人気の理由とその背景
まだお若いご夫婦が、いずれは2階建てにする必要があるとしても、現在はコンパクトな平屋建ての住まいを建てる。
あるいは、老後、夫婦の二人暮らしに2階建てはあまり向いていないと考え、2階建ての家を減築して平屋建てにする。
平屋建てそのものに魅力を感じ平屋建てにするなど、平屋建てを選択する理由はさまざまですが、住まいをコンパクトにした場合、来客用のスペースや収納スペースなどに不足が生じることもあります。
「中2階」は平屋建ての魅力を持ちつつこの不足を補う有効な工夫で、「中2階」を設けた平屋建てに人気が集まる大きな理由です。
もう一つの理由としてあげられるのはコスト面です。
2階建てと同じ床面積の平屋建てを建てようとすれば、コスト高になるのは避けられませんが、2階建ての床面積を必要とせず、コンパクトな平屋建てを選択すればローコストで建てることができます。
家自体がコンパクトであることは建築費を抑えることにつながり、建築費を抑える一方、暮しにとって必要なスペースも確保する、この二つを両立させるのが平屋建ての「中2階」で、暮らしに必要なスペースの確保とローコストを実現できるわけです。
これが、「中2階」のある平屋建てが人気を集める所以です。
しかし、「中2階」を有効に活用するためには、断熱、換気、空調、照明などについて十分に配慮しておく必要がありますので、設計のプランニングでは、じっくりと専門家と相談するようにしましょう。