コラム
(概要)
「二世帯住宅」というと、2階建て・3階建ての住宅を思い浮かべる方が多いとおもいます。平屋建てで二世帯住宅は可能なのでしょうか?
(本文)
二世帯住宅の3つタイプ
二世帯住宅には3つのタイプがあります。はじめに、その3つのタイプを見てみましょう。
■完全同居型
古くからあるタイプで、寝室以外のスペースを親世帯・子世帯で共用します。
ふたつの世代が共に過ごす時間が長く、世代間の関係が密になる点がメリットです。小さいお子さんに何かがあった時、親御さんに何かがあった時、お互いがすぐ対応できる安心感があります。その反面、プライバシーを保ちくいデメリットがあります。
■部分共用型
3つのタイプの中で最も多く採用されているタイプです。それぞれの居住スペースを別個にとりつつ、キッチン、バス・トイレなどを2つの世代が共用するタイプです。
2階建ての場合、キッチン、バス・トイレなどの水回りを1階に設け、それぞれの居住スペースを1階と2階に分けるスタイルが多く見られます。
世帯間のプライバシーを保ちながら生活することになります。しかし、朝型・夜型など世代間のライフスタイルの相違によって、お互いに遠慮や気兼ねが出ることも考えられます。
■完全分離型
たとえば、1階に親世代、2階に子世代が住み、それぞれにリビングやキッチン、バス・トイレがある、というタイプです。
あるいは、2階建ての家を縦に分割するケースもあります。親世代、子世代の生活空間が完全に分離され、玄関もそれぞれの世代のものを設ける例もあります。
プライバシーを保つことができる点が大きなメリットですが、完全同居型、部分共用型にくらべ世代間の交流が少なくなるというデメリットもあります。
平屋建ての二世帯住宅
では、平屋建ての二世帯住宅はどうでしょう。可能でしょうか? 答えは「3つのタイプいずれも可能」です。
(1)平屋建て「完全同居型」
これは「サザエさん」の家をイメージすればわかりやすいですね。
波平・フネの世代とサザエ・マスオの世代、ふたつの世代が仲良く同居しています。サザエさんの家は、木造平屋建て、延べ床面積約30坪と推定されていますが、平屋建て「完全同居型」の典型的なスタイルです。
しかし、「サザエさん」のような平屋での二世帯完全同居を望む家庭も少なくないとは言え、ふたつの世代の一方だけがこのタイプを望んでも、後々問題が起こることも考えられます。双方が納得したうえで採用したいタイプです。
(2)平屋建て「部分共有型」
平屋建てにおいて親世代、子世代がそれぞれの生活スペースを確保しつつ、共有部分を持つスタイルです。
たとえば「凹」の字型の平屋をイメージしてみましょう。真ん中のへこんだ部分は内庭とします。「凹」の左右の突き出た部分に親世代、子世代の居住スペースを作り、ふたつがつながる部分にリビングやキッチン、バス・トイレなどの水回りを集中させるという間取りが考えられます。
夏、内庭で2つの世代が夕涼みをするというのも魅力的ですね。
(3)平屋建て「完全分離型」
「部分共有型」であげた例を基にすれば、内庭を挟んだ左右の居住スペースにそれぞれの世代専用のキッチンやリビング、バス・トイレなどを設け、親世代子世代の生活空間を完全に分離した形にするものです。
ただ、この場合、2階建ての「完全分離型」同様、バス・トイレなどが2つ必要になる分、建築費がかかる、親世代が亡くなった後、親世代の居住スペースをどうするかという問題も出てきます。
「平屋建てで二世帯同居の家を建てるには土地が広くなければ」とお考えになる方も多いとおもいますが、たとえば建て坪が16坪程度でも平屋ならではの魅力を持った二世帯住宅も可能です。ぜひ、ご相談下さい。
二世帯住宅のお金の問題
ところで、二世帯住宅には、ローンを組む際の融資や税金面で気をつけたい点があります。
二世帯住宅の登記には「単独登記」「共有登記」「区分登記」がありますが、この登記によって問題が発生するケースがあるのです。
「単独登記」は、二世帯住宅を1戸の住宅とみなし、どちらかの世帯の単独所有として登記するものです。
しかし、たとえば、子が資金の一部を負担したにも関わらず親の単独登記にしてしまうと、名義人への贈与とみなされ、贈与税が発生するケースがあります。
「共有登記」は二世帯住宅を1戸の住宅として、親子が共有名義で登記するものです。住宅ローンを利用して二世帯住宅を建てた場合、所得税が戻ってくる「住宅ローン控除」というものがありますが、共有登記の場合、この住宅ローン控除を親子で適用することができます。
「区分登記」は二世帯住宅を2戸の住宅として、それぞれ登記するものです。
ただ「2戸」として登記するには、二世帯を区切る部分に防火壁の設置が必要であったり、内部で行き来ができる間取りの場合、「鍵がかけられる扉で通路が仕切られていること」などの制約があります。