コラム
メリットがあればデメリットもある。これは、何においても言えることでしょう。もちろん、建売住宅に関しても同様です。建売住宅をマイホームの選択肢の一つとしてお考えであれば、そのメリット・デメリットを知ることは大切です。今回は、さまざまな視点から建売住宅について説明させていただきます。ぜひ、マイホームを検討される際の判断材料にしていただければ幸いです。
メリット1 素早く購入したいなら建売住宅は最適
注文住宅、中古住宅、マンション、マイホームなどの選択肢の中から建売住宅を選ぶのは、すぐに購入できるというメリットに惹かれたからでしょう。購入できれば、そのまま入居が可能というスピード感は、注文住宅では絶対に得ることができないものです。
ライフステージの節目にあたる時期では、スピード感は大きなメリットです。子供の新学期に合わせたい場合など、転居までの期間が短い際に、かなり有利に働きます。すでに建てられた物件のため、打ち合わせをしながら作り上げる時間がありません。忙しくて時間をかけられない場合でも、建売ならそれほど負担にならないのです。
建売住宅は住宅ローンの手続きも早い
マイホームを契約したら、手付金を支払った後から住宅ローンなどを組むことが多いでしょう。このとき、建売住宅ならば、ローンを組む手順が単純化します。これは、土地代と建物代が明確になっているからであり、煩雑な手続きを減らすことができるのです。スピード重視にする場合には、大きな利点になります。また、金融機関の立場から考えても、不動産会社などが間に入るため、スムーズに進められることはメリットでしょう。
メリット2 建売住宅の立地は好条件な土地が多い
建売住宅は、新規開発地に建てられることが多く、元が大きな土地が分割されて売りに出されていることもあります。このケースでは、区画整理が綺麗にされていたり、立地が優れていたりすることが多いです。近隣の環境に恵まれているケースが多く、生活環境としても優れていることがポイントになります。
マイホームを構えるには、生活環境は重要なポイントです。優れた環境を選ぶことができれば、これ以上のメリットはないでしょう。区画整理されている場合、境界がはっきりしているため、隣地とトラブルになる可能性も低くなります。建築に合わせて道路整備が行われている場合があるため、高い利便性に恵まれていることが多いのも特徴です。
メリット3 イメージと違う……が少ない
建売住宅は注文住宅とは違い、すでに建っている家の実物を見て購入することができます。注文住宅の家づくりでは、間取りから設備までたくさんの選択をしていきます。しかも、ほとんどの方にとって初めての体験ばかり。そのため、リビングは20帖ぐらい!と図面上でプランを建てていても、いざ暮らしてみたら「広すぎて住みにくい」と感じたり、サンプルを見て壁紙を選んだけど、壁一面に貼られると違和感を持ってしまったり……など、頭の中のイメージと実物に差が出てしまうことがあります。
もちろん、注文住宅を建てる方には、住宅展示場や見学会、ショールームなどに何度も足を運んで頂くことで、イメージ通りの家に近づけていくことが可能です。しかし、建売住宅であれば、実物の家を見て判断するため、“感覚を養う”ための行動に時間を割かなくても「イメージと違う……」という事態に陥ることはありません。
メリット4 注文住宅よりもリーズナブル
建売住宅のプランニングには、施主は参加しません。そのため、手間や段取りを省略可でき、人件費を安く抑えられます。また、建具や内装材もプロが選択していくので、同じ建材メーカーで統一することで仕入れコストを削減したり、低価格でも見栄えの良いデザインを選んだりして、無駄のないコスト計画ができます。そのほか、工事時期を調整できるのも建売住宅のメリットです。施主の都合に合わせなくても工事を進められるため、大工や職人の手が空いている時期にうまくスケジュールを組み、コストダウンしている会社もあります。
デメリット1 ちょっとの変更も難しい
メリットがある反面で、デメリットの存在も知らなければいけません。後で失敗したと思っても、解消できないことがあります。事前確認を疎かにすると、大事な住宅購入を失敗することになるでしょう。
建売住宅の一番の特徴は、すでに完成している家を購入することです。これはメリットにもデメリットにもなります。自分の好みに合わせて作る注文住宅とは異なり、住宅会社などが考えたデザインや間取りを元につくられます。そのため、構造に関する変更は難しいと思っておいて下さい。将来、バリアフリーにするなど間取りを変更したいと思っても、外せる壁と外せない壁があるでしょう。
また、全体的に気に入っていても完璧とは言えない。なんてことがよくあります。間取りは良いけどこの壁紙は好きじゃない、ベランダがもう少し広ければ良いのに……というような小さな不満が出てくるケースは少なくないのです。そのちょっとした部分を変更したいと思っても、すでに建っている家から修正できることは、限られています。もし、変更が可能な場合でも、大がかりな工事になれば多額の費用がかかります。
注文住宅の場合は、設計者のアドバイスのもと、施主のライフプランを見据えてプランニングをしていきます。建売住宅では、そういったアドバイザーがつかないので、買主が自分自身で将来の生活をイメージして、現在の間取りで一生暮らしていけるかを検討していかなくてはいけません。
住宅は、一度購入すれば簡単に買い替えることはできません。売ることも簡単にはできないでしょう。もちろん、好みの家が見つかるまで建売住宅をたくさん見て回るという方法もありますが、自分たちにとってパーフェクトな家に出会うのはなかなか難しいと思います。どこかで妥協しなくてはいけない、というのが建売住宅のデメリットの1つになります。
デメリット2 壁の中が見えない
家には、家族を風雨や災害から守る役割があります。地震大国の日本では、耐震性能は欠かせませんし、壁の中に入る断熱材もランニングコストに大きく影響するため大切です。しかし、建売住宅の場合、扱われる建材を事前に選べず、きちんと施工されているかをチェックできません。もちろん、建築基準法を満たしていれば最低限の安全は保証されますが、構造や断熱性がどのように家族の生活に影響するのか、事前に確認したり選択したりする余地がないのです。
家族を守る家ですから、どれほど住宅会社と信頼関係を築けていても、重要な構造部分などは自分の目で見て確認したいものです。注文住宅の場合は、施主さんが工事中に現場に何度も足を運びます。家ができ上がる課程を楽しむという理由もありますが、きちんと図面どおり契約どおり施工してくれているかどうか、チェックをするという目的もあります。大工や職人も、施主のチェックや労いを受けながら、「よし、この家族のために一生懸命仕事をしよう!」と気合いが入るものです。
図面どおり正しく施工するのは、注文住宅でも建売住宅でも同じですが、やはり人間の手による作業なので、この人のために、と力を尽くすことには重要な意味があります。残念ながら、これは注文住宅ならではのメリットであり、建売住宅では難しいでしょう。
デメリット3 つくり手との関係性が薄い
デメリット2の項目でも触れたように、つくり手と施主との関係性を築きにくいのは建売住宅のデメリットの1つです。最近ではほとんどなくなりましたが、欠陥住宅は、注文住宅よりも建売住宅のほうが多く発生します。建売住宅は壁の中が見えないので手を抜きやすい、という点が大きいですが、何より施主と建築会社との関係が希薄すぎて相手の不誠実さを見抜きにくい、という要因も大きいように思います。
建売住宅は、壁の中身を確認できないので、住宅会社をしっかりと見極める必要がありますが、単に売買契約を結ぶだけとなると、相手を見極める機会はなかなかありません。
アフターメンテナンスは誰に頼むのか
注文住宅の場合、施主は住宅会社を信頼して数千万円もの財産を託し、住宅会社は家族の日常やライフプランにまで首を突っ込んで徹底的に家族の生活に向き合います。その結果「一生のお付き合い」という関係性が築かれます。
一方、建売住宅の中には、「売り切り」のスタンスで営業している会社もあります。住宅には瑕疵担保保険があるので、構造上の大きな欠陥などには一定期間対応する義務がありますが、期間を過ぎて起きた欠陥や、構造以外の軽微なトラブルには積極的に対応してくれない建売業者もいます。
つまり、建売住宅には、家のメンテナンスをしてくれる掛かりつけ医がいないというデメリットがあると言えます。注文住宅を建てている住宅会社には、「ちょっと網戸のスライドが引っかかるから見て欲しい」とか「床に傷を付けてしまったけど直せるだろうか」といった相談がちょくちょく入り、営業マンや大工は自分が担当した施主の家であればすぐに駆けつけます。
それは、人間関係が構築されているからこそのメリットであり、建売住宅ではその部分は大きく期待できないでしょう。早い段階で懇意のリフォーム会社を見つけておくか、不備があるごとに専門の業者を調べて問い合わせる必要があります。
デメリット4 低価格の根拠を知るのが難しい
建売住宅のメリットの1つに、注文住宅よりもリーズナブルという点があり、コストダウン方法の例もいくつか上述しました。しかし、中にはそういった工夫でコストダウンをしているのではなく、単純に資材にかける費用を極少まで削ってコストダウンしているケースもあります。そのうえ、コストを削る部材はたいてい壁の中に隠れてしまう部分にあるのが怖いところです。
柱の「量」は図面に記載され、建築確認申請もされますが、柱の「質」までは記載されません。過去に、節で欠損が多い材木(ほかの住宅会社が使わないB級品)を安く仕入れて柱に使っていたという建売業者がありました。「柱がたくさん入っている安心構造です」と説明されれば、素人である買主は「なるほど」と安心してしまいます。「材木の質は?」なんて質問する人はなかなかいません。
建売住宅は、リーズナブルな価格を売りにしていることが多いので、購入を検討するときは、どうして低価格にできるのですか?と住宅会社に聞いてみて下さい。その回答に説得力があるかないか、隠していることはないか、などを見極める必要があります。可能であれば、その会社が建築中の建売住宅の現場を見学するのもいいでしょう。
建売住宅と注文住宅の両方を取り扱っている会社もありますが、その場合も必ず建売住宅の現場を見て下さい。建売と注文では部材を使い分けている会社があります。建売住宅は、手軽に時間をかけずマイホームを取得できることが最大のメリットですが、壁の中の部分だけは手間を惜しまずしっかりとチェックして下さいね。
建売住宅のメリット・デメリットまとめ
メリット1.素早く購入できる
メリット2.好条件な土地が多い
メリット3.イメージと違う…が少ない
メリット4.注文住宅よりもリーズナブル
デメリット1.ちょっとの変更も難しい
デメリット2.壁の中が見えない
デメリット3.つくり手との関係性が薄い
デメリット4.低価格の根拠を知るのが難しい
建売住宅を買いたいと思った方は、おそらく建売住宅のメリットが先に頭に浮かんでいることでしょう。しかし、冷静になり、多角的に調べていくことで、実態が見えてきます。どんなデメリットでも、最終的に困るのは買主であることは間違いありません。だからこそ、多くの情報を集めて購入することが重要なのです。
手軽に買いたいという気持ちのあまり、必要な作業まで省いてしまっては、将来的に余計な手間やお金がかかることになりかねません。仮に急いでいる場合であっても、情報収集はしっかり行って下さい。
建売住宅のメリットは、スピードにあることは間違いありません。ですが、安かろう悪かろうで済むものではありません。長く住むためにはメンテナンスも必要で、事前の調査も重要です。こうした調査をどこまでできるのかが建売住宅のポイントになってくるでしょう。
失敗しない建売住宅の選び方は、デメリット部分を丁寧に埋めていくことです。建売住宅のデメリットを最小限にしてメリットを生かせれば、きっと大切なマイホームになるでしょう。