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コラム

分譲住宅とは?今さら聞けない住宅購入の基礎知識

2022.10.24

実は専門用語だったあの言葉!?

今回は、「専門用語」についてお話します。興味のない方が多いかもしれませんが、意外とよく質問さえるので、ちょっと書いてみました!言葉の意味を理解すると、マイホーム探しの際の役立つと思います。ぜひ、ご覧くださいね。

 

家づくりを考えるうえで、業界の中だけでよく使われる言葉がいくつかあります。今ではもう一般名詞になっているかもしれませんが、『注文住宅』もそのひとつ。注文住宅というのは、土地に合わせて,ご施主さまのご希望を伺って間取りを一から作っていく住宅のことを指します。多くの注文住宅は,外観も間取りもすべて皆さんの意向のとおりに決められます。ですから、建築工法も何もかも全部皆さんの好みに合わせた家づくりが注文住宅ということになります。

 

では、不動産業界で古くから使ってきた『分譲住宅』という言葉はどのような意味なのでしょうか。これも一般名詞化していますが、分譲住宅の意味を質問されると正確に答えられない一般の方は結構多いと思います。

 

■分譲住宅の意味とは?

分譲住宅の『分譲』とは『分割譲渡』の略称です。ある不動産業者が、広大な土地を手に入れたとします。ですが、その大きな土地はそのままでは転売できないので、その土地を細かく区分けして住宅を建築して、一区画ずつ販売します。このスタイルが分譲住宅です。また、広い土地を入手して、道路をつけたり、上下水道やガスなどを引き込む行為を土地の『開発行為』といいます。

 

新築住宅の中には『建売住宅』という名称で販売されている物件があります。建売住宅と分譲住宅は、根本的な意味合いは同じです。つまり、土地とすでに建設された住宅をセットで販売するという意味です。ただし、建売住宅の場合、ある限られた土地に住宅を建設して販売するスタイルで、1区画しか無い土地に建物を建てた場合は、建売住宅とは呼べても、厳密には分譲住宅とは呼べないということになります。

 

それでも、基本的には分譲住宅は建売住宅と同じで、すでに建築された建物と土地をセットで販売することが多いのです。分譲住宅として販売されている物件の一部には、土地だけを分割して提供している建築前のものもあります。その場合は、『売建(うりたて)』と呼び、厳密には区別されています。

 

ただし、この場合は既に役所に建築の申請を出してることが条件です。購入者は土地だけを確保して、間取りなどが決まっている建物に、一部(外壁の種類、色、内装の素材など)だけ意思を反映させて建設するスタイルをとっていることもあります。この場合は,契約が済んでから建築が始まりますので、入居は遅くなりますが、建築中の現場では棚の追加など細かい変更を受け入れて貰える場合があります。

 

正直なところ、用語の厳密な意味を覚える必要は全くありません。ですが、プロの中にはしっかりと説明をしてくれない人やよく解っていない人間もいますので、念ため用語をしっかりと説明させていただきました。

 

この文章を読まれている一般の読者の方は、建売住宅と分譲住宅をしっかり区別する必要などありません。ですが、住宅のバリエーションを考えるうえでは、分譲住宅を検討される方が多いと思ったので、念のためお伝えしました。続いて、分譲住宅のメリット・デメリット、注意点などを紹介します。

 

■分譲住宅のメリットは?

分譲住宅の一番大きなメリットは、価格が比較的安価だという点です。複数棟を同時に建築する場合が多いので、大工さんや建物に関わる建築費用を圧縮することができます。また、外壁にしても内装や、キッチンお風呂なども同じような仕様を複数棟分購入するので、コストを圧縮して購入者に還元することが可能になのです。

 

専門家に間取りを任せることができるため、一般的には使いやすい家になるというのも利点です。「せっかくのマイホーム、間取りは自分で自由で決めたいな」と思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、間取りを素人の感覚だけですべて決めるとなると、意外に後から使いにくい間取りになってしまうことあります。

 

私も注文住宅を作りたいお客様の相談にのらせていただいています。その際、間取りについていろいろと質問を受けることがあります。特に、水回りをどうするかで悩む方が多いようですね。水回りをどこに配置するかで、配管が変わってきます。樹脂材料で配管することが多い排水管は、給水管に比べて経年劣化しやすく、傷みが進んだり詰まりを起こしたりします。もし、間取りの問題で、配管が必要以上に長くなったり、何度も折れ曲がったりするなど複雑になると、万が一詰まった場合の解決に非常に時間がかかります。それが基礎の中だと最悪基礎を壊さないといけないかもしれません。リフォームもコストがかかる場合が出てくるでしょう。分譲住宅であれば、間取りや配水管の長さなどのレイアウトの問題を専門家が効率よく検討してくれるので失敗が少なく安心です。

 

マイホームを購入する際、住宅ローンを組もうと思っている人は多いでしょう。住宅ローンからの融資を受けるには、審査をクリアする必要があります。すでに土地と建物のある分譲住宅の場合、比較的住宅ローンを通しやすいですし、後から追加が発生しません。また、住宅ローン実行後、直ぐに引越ができますし、金利も実行時の金利ですから現在の表示金利から大幅な変更がありません。

 

自分で間取りなどのデザインを決められる注文住宅の場合、土地を購入してから建物を建設する形になります。この場合、住宅ローンの申込と審査は事前にできても、住宅ローンの実行は建物が完成した後になるので、そこまで実際の借り入れ金利がいくらになるのかはっきりしません。万が一、何か大きな経済的なショックがあった場合には返済金額が変わることもありえます。

 

また、分譲住宅のメリットとして、税負担が軽減できるというものもあります。土地が更地の場合、固定資産税が高くなります。ところが、分譲住宅のようにすでに土地の上に建物があると固定資産税は減額されるルールになっています。土地を先に購入して、建築中にたまたま年を越した場合は、1年分は高い固定資産税を支払わなくてはなりません。たった1年のことですが、固定資産税は土地の高いところほど高くなります。四日市、鈴鹿、桑名などの人気のエリアで注文住宅を建てる場合は、事前にご相談いただければと思います。

 

もちろんメリットだけではなく、デメリットもいくつかあります。

 

1つ目は、もう完成している住宅なので変更が難しいということです。憧れを形にすることは困難と言えるでしょう。また、材質の変更もできません。注文住宅のわくわく感は味わえないと思っておいて下さい。また、中には現場が非常に汚い、材質や設計にかける費用が安いため、耐震性能や断熱性能が劣る……という場合が考えられます。つまり、注文住宅に比べてやや地震に弱く、夏は暑く冬は寒いという家になっていることがあるのです。最近の分譲住宅は、その点が改善されていると思いますので、建築中の写真をしっかり見せてもらって、性能を確認した上で納得して決めてください。

 

■分譲住宅を購入したほうのいい人は?

分譲住宅向きの方には、いくつかのタイプに分かれます。

 

  • 予算を抑えたいというご家族さま

分譲住宅の場合、広大な土地にまとまった住宅を建設して販売するスタイルをとっています。資材を大量購入することでコストを抑えることができるので、同じような条件の建売住宅と比較するとリーズナブルな価格で販売されている場合が多いです。マイホームを購入したいけれど、できるだけ少ない費用で買い求めたいと思っているのであれば、分譲住宅を選択肢の一つにするのは良いことだと思います。

 

  • 実物を見て、納得できる物件を購入したいと思っている方

分譲住宅なら、購入する前の段階で、外観はもちろんのこと、内装や間取り、周辺環境などをきちんと自分で見て確認することができます。注文住宅の場合、業者と細かく打ち合わせをすれば自分のイメージ通りの住宅を建設することは十分に可能なのです。しかし、私の友人の工務店の社長から時折、『自分が思っていた建物と違う!』ということでトラブルになる場合があると聞きます。

私は、今までそのような経験はありませんが、「外壁の色が思っていたのと少し違う」「壁紙がイメージとちょっとずれている」というような細かい違いは、数多く経験しています。もちろん、お客様としっかり話し合いをして住宅を建築するので、大きなミスは起こらないのですが、それでも小さなサンプルと家が建った場合の大きな面積での感覚のずれはゼロにはできません。その点、分譲住宅は実物があるので、このような感覚のずれは起こりません。マイホームを購入するにあたって、デザインでは絶対に失敗したくないと思っている方におすすめです。

 

  • 早く入居したい方

注文住宅だと、自分でどんな住宅を建築してほしいか、工務店と打ち合わせをして、土地を購入し、建物が完成して、やっと入居という運びになります。それまでに半年ほどの期間がどうしても必要です。しかし、分譲住宅の場合、すでに建物が完成した状態で購入することになります。住宅ローンの審査が通れば、即入居が可能。お子さまの学校の問題など、すぐに入居したいという方には分譲住宅の購入に向いていると思います。

 

  • 希望の土地に空きがない場合

建物が建っている場所を気に入っていて、空いている土地がほかにない場合も分譲住宅を選んだ方が良いと思います。三重県には、空いている土地が沢山ありますが、四日市、桑名、鈴鹿などの人気のエリアによってはなかなか土地がない場所もあります。その場合は、分譲住宅一択になる場合もあるでしょう。

 

■分譲住宅を購入するにあたっての注意点

分譲住宅を購入する場合、注意すべき点は2つです。1つ目はアフターサービス、2つ目は住宅の実際の性能です。それぞれみていきましょう。

 

まずは、アフターサービスをチェックしておいて下さい。なぜなら、分譲住宅の場合、住宅の建築主と販売者が違う場合が非常に多いからです。不動産屋さんが土地を購入して、開発行為を行い、建築会社が住宅を不動産屋さんの指示で建てている場合は、第一義的には売った不動産屋さんに責任があります。そのため、不具合が発生したときは、不動産屋さんの担当者に連絡をします。ですが、不動産屋さんは建物に関しては素人ですので、必ず建築会社に相談することになります。そうすると、問合せをしてもたらい回しにあう危険が出てくるでしょう。

 

欠陥住宅は、現在の仕組みではほとんど起きません。しかし、入居後10年間の瑕疵担保保険の期間中に様々な不具合が生じることは十分にあり得ます。その場合、瑕疵担保保険などを活用して、無償で修理・補修を受けることが可能です。そのほか、10年の保証期間が過ぎてからのアフターサービスを誰に相談していいのか解らないという場合は少なくありません。不動産屋さんや下請けの建築会社は、頻繁に倒産していますので当事者が解らなくなったという話もよく聞きます。

 

分譲住宅購入の場合は、必ず以下の点を明確にしてください。不動産屋さんの担当者、建築会社の名前と担当者、瑕疵担保保険の会社と連絡先です。不動産屋さんができて10年以内の場合や、建築会社が下請けしかしていなくて、社歴が10年以内の場合は、倒産する可能性を完全には否定できませんので注意してください。

 

最近は、瑕疵担保に加えて、さらに10年程度保険期間を延長して20年保証をうたっている住宅も見かけるようになってきました。ただし、その場合は10年目に大規模な補修を要求される場合がありますので注意が必要です。

 

もう1つのチェックポイントである住宅の性能は、耐震等級(構造計算上の耐震性能)で解ります。昭和時代に建った住宅のほとんどは、「等級1」です。分譲住宅の建物にも、等級1が多いようです。これは、震度6強の地震が来てもすぐには家が倒壊しないレベルの強さと言われています。ここで、ポイントは「震度6強で直ぐに」という言葉です。震度7が2日にわたって2度も起きた熊本地震の場合は、この耐震等級1の1.5倍の性能がない住宅の多くはすぐに倒壊してしまいました。倒壊を免れても建てかえを余儀なくされています。耐震等級1の1.5倍の性能は、耐震等級3という値です。覚えておいてください。

 

また、断熱性能も今後の住宅には非常に大切です。政府はエネルギー問題、二酸化炭素排出の問題などで断熱性能を向上させようとしています。最近では、ゼロエネルギー住宅なども登場しています。しかし、分譲住宅の多くは断熱性能に関しては最低限の性能しか持っていない場合があります。さらに、極まれに現場での不具合を隠している場合もあります。そのため、必ず中間検査などのときの写真でチェックすることが必要です。施工途中の写真を見せてくれない分譲住宅は論外です。そのような不誠実な会社からの購入は絶対に止めてください。

 

最後に

マイホームを購入するにあたって、建物の見た目である外観や内装をチェックしている人は多いでしょう。しかしながら、周辺環境についてはあまり調査しないで、購入を決めるお客さまが多いのは気になるところです。通勤・通学するにあたって、電車を利用するのであれば最寄り駅までの距離、銀行やスーパー、病院などが近くにあるかなどもチェックしたほうがいいと思います。

 

子どものいる家庭の場合、学校がどこにあって通学路はどうなっているのか、周辺に子供を遊ばせることができる公園があるかも見ておくと子供を育てるのに適した環境かどうか判断できます。また、市役所などが公表しているハザードマップや、県警が公表している犯罪や交通事故の記録などもチェックすることをおすすめします。

 

分譲住宅の大きな特徴は、すでに完成した建物を販売することです。建物の実物を見て購入するかどうか判断できるので、後悔の少ないマイホーム選びができるのが魅力だと思います。少し前は、分譲住宅といえばデザイン的にいまひとつの物件が多かったのですが、最近ではデザインや使い勝手に違いを持たせることで個性のある住宅を提供している業者も出てきています。マイホームを購入するのに分譲住宅を購入される場合は、今回お伝えしたことをご確認いただき、より良い結果に繋げていただければ幸いです。