コラム
子育て世代の注文住宅にありがちなこと
注文住宅を建てる際は、増えていく家族のことを考えて、部屋数・収納スペース等を多めに確保しようと奮闘するものです。「自分たちの家!」「ここが家族の城だ」「安心して帰ってこれる家にしたいな」等々、さまざまな思いをはせていたことと思います。家族の人数がマックスだった頃は、手狭にさえ感じていた住宅が、いざ子育てが落ち着き夫婦だけで生活する時間が増える(or夫婦だけの生活となると)と、広すぎるように感じることも...。
厚生労働省の調査によると、日本の男性の平均寿命は80.98歳・女性の平均寿命は87.14歳。加えて47都道府県ごとに寿命の長さをランキング化すると、三重県は男性16位・女性24位という男女ともに上位でした。
一般的に定年退職して、子育てが落ち着く老後と呼ばれる期間は、高齢化社会という言葉が表すように年々延びています。つまり夫婦だけで家にいるようになる期間も延びるので、本来であれば注文住宅を建てる段階から、老後過ごす時間のことを無視した設計はしてはならないのです。若いころから老後を意識しろというのは、難しい話でもありますが……)
子育てが落ち着いた夫婦が、2人で協力して家のことをこなせる家とは?夫が家事に参加するようになる、妻も少し楽になる注文住宅づくりについて、妻向け目線でお話します。
参考 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-02.pdf
http://area-info.jpn.org/area240001.html
「単純でわかりやすい」を基準に
「仕事を定年退職するまで、家のことはすべて妻に任せてきた」そんな男性もまだまだ多い世の中、まずは夫婦2人が協力して家事を行うために、妻だけが理解している内容を夫にもわかってもらう必要があります。しかし、物の位置や家事のやり方を1つ1つ説明し、暗記させる・暗記するのはお互いに手間ですよね……。こんなことをしているうちに、夫も家事に参加する気をなくしてしまいます。
ここで必要となるのが、“単純でわかりやすい”を基準とした家です。物の位置つまりは片付ける場所が一目で分かるようになっていたり、家事動線が明快で不必要な動きをする間取りではなかったり。家事をしたときの成果が目に見えてわかる単純なものなら、夫が家事に参加できたときに尚さらやる気を刺激しやすくて良いです。
頻度が少なくて済むように
家事は毎日同じことの繰り返しが多いですが、今まで妻が行ってきたのと全く同じようにというのを求めるのは、今更家事に取り組みだした夫にとっては難しい話。家事が時間的にも体力的にも大仕事であるということは、今まで取り組んできた妻が1番分かっているのではないでしょうか?ですから今度は、夫が動きやすいように、同じことを行う頻度が少なくて済むように、妻がサポートをしてあげましょう。
例えば2階建て住居で、1日に何回も階段を上り下りするよりも、平屋住宅にするほうが時間的にも体力的にも楽に家事を行えるようになります。まずは間取りを工夫して、“移動する長さ”を減らしてあげるのです。これに伴い、家事のために腰を上げる頻度や立ったり座ったり身体に負担をかける頻度が減り、家事をスムーズにかつ継続的に行うことができるようになります。新たに住宅を設ける場合は、平屋建ての注文住宅を希望すれば良いですし、既存の住宅を活用するならば、1階だけで生活の大部分を完結できるように、使い勝手よくリノベーションするというのも手です。
この時、照明にはぜひともLEDライトを採用してほしいところ。広く知られているように、LEDライトの特徴には、長寿命であり省エネという2点が挙げられます。長寿命ということは、それだけ照明切れを起こさないから交換が不要ということ。省エネで、家計にも優しいのが嬉しいですね。さらにセンサー付きの照明を選べば、必要な時だけ点灯するので、さらに無駄な点灯を省くことができます。またLEDライトには、虫が寄り付きにくい・気温の低いところでも明るく点灯しやすいという特徴もあります。この2つは「初めて知った!」という方も多いのでは?いまいちピンとこないのが、気温の低いところでも~という話だと思いますが、実は蛍光灯には気温の低い場所では明るくなりにくいという短所があるのです。LEDライトなら蛍光灯の短所を解消できるので、屋外での使用にももってこいというわけです。
任せられる家事を見出す間取り
では具体的にどんな家事を夫に任せられるのか、前述した“単純でわかりやすい”と“頻度が少なくて済む”に着目しながら考えてみましょう。
美味しいご飯は家族を笑顔にする
まずは台所食卓編。
妻の身長に合わせて作った台所での家事、背の高い夫に任せては夫の腰が痛くなるだけで、任せられる家事としては継続しないので×。それならいっそのこと、台所仕事(料理を作る)は妻がして、オープンキッチンから食卓へと料理を運ぶ仕事を夫に任せましょう。オープンキッチンにすれば、食卓側によく使う食器・カトラリーをいれておくことで夫にできる簡単な役割が生まれます。台所仕事を手伝うハードルはぐんと下がりますし、キッチンが決して広くなくとも、2人で食事の準備に取り組むことができます。メニューに合わせて、夫に食器を選んでもらうのも良いですね。顔を見ながら会話ができるので、背を向けて黙々と料理をする(される)よりも「何か手伝うよ」「じゃあ、これ持って行ってくれる?」等の会話をしやすくなります。
床材を変えたら夫が掃除をするように!?
続いてリビング編。
夫婦2人の生活が始まって、1日の大半をリビングで座って過ごしているなんて日も増えたのではないでしょうか。リビングさえ掃除すれば良いくらいに、他の部屋を活用していないなんてことも。そんなご夫婦におすすめなのが、リビングの床材を無垢材のフローリングにすることです。無垢材のフローリングは、別荘や高齢者施設においても物件の付加価値として人気を集めている素材です。
フローリングの大半は、集成材という薄い板を積み重ねて作った木材でできています。無垢材のフローリングは、1枚の木の板でつくったフローリングで、集成材フローリングと比べると少し高値になりがちです。無垢材のフローリングの良い点は、自然の物をそのまま使うので調湿効果が優れているということ、はだしで歩いても温かさを感じること、革製品と同じで経年劣化を楽しめることなどなど。悪い点は、きちんと手入れをしないと反りやトゲが出てしまうこと。この悪い点こそ、無垢材の魅力でもあるのです。掃除1つとっても、集成材のフローリングに比べて手間がかかるので、「ペットを飼うには今更感がある」「庭仕事の趣味はない」「外で身体を動かす趣味はないけれど、家でできる何かを始めたい」こんな新しく何かに没頭したいと思っている人や育てたいと思っている人におすすめです。
水回りを集中させれば使い勝手がグンと良くなる
次に水回り編。
入浴前に脱いだ服は、脱衣所を兼ねた洗面所に置いてある洗濯機へポイッ。洗濯機が止まったら、洗面所脇の陽当たりの良いバルコニーへ干して、さらにバルコニー脇の衣装部屋に、できあがった洗濯物を収納。台所仕事の合間を見ながら、衣装部屋の隅でアイロンがけ……。こんなふうに水回りが集中した間取りなら、単純で進捗具合がわかりやすいですよね。仕事・移動する頻度が少なくて済むから、夫も手伝いやすいかも。洗濯機が止まるまでの間は、お風呂掃除・トイレ掃除をお願いしちゃいましょう。理想の間取りを実現できるのは、注文住宅ならではの利点です。
洗濯物の話ついでに、衣装収納に関して。皆さん「ウォークインクローゼット」という言葉に聞き馴染みはあることと思いますが、「システムクローゼット」という言葉はご存知ですか?ウォークインクローゼットが1つの部屋のように、内部を歩くことができるくらい大きなクローゼットであることを示すのに対し、システムクローゼットは広々としたウォークインクローゼットは確保できずずとも、突っ張り棒や可動棚などのパーツを、建付けにせず自分で好きな時に好きな高さ・位置に変更することができるつくりになっている使い勝手の良いクローゼットのことです。季節によって、手前に出しておきたい衣装が変わる場合などに特に重宝するつくりです。家族の人数が減ったことで大きな収納は必要ないけれど、使い勝手の良い収納は欲しいという夫婦のみの住宅にはもってこいの収納です。
趣味や自由の時間を過ごせる場所を
さて、ここでいったん家事話はブレイクにして趣味の話。
夫婦2人の生活が始まると、使わない部屋がどうしても出てきます。衣食住それぞれに必要なスペースは本当に狭く、土地面積によっては平屋でも広すぎるくらいです。リビングを無意味に広くしたり、自分たちでは移動させることができないような大きなソファを買うよりは、夫婦それぞれの趣味や自由な時間のために使える場所を確保したほうが賢明です。退職後、家にいる時間が増えたからといって、家事を手伝わせてばかりで夫の自由を奪ってはいけません。これまで子育て・家事を頑張ってきた、妻にものんびりする時間は必要です。2人一緒に楽しむことができる趣味があれば最も良いですが、お互い1人の時間を楽しめる場所を用意することも忘れずに。
家事は玄関の外にも
では、家事の話に戻りましょう、続いて庭仕事編です。
「虫が出るから、庭仕事はどうも苦手。だけど雑草を放っておくわけにもいかないから、仕方なく庭仕事をしているの。」なんて妻も多いのではないでしょうか?もし、そう思っているなら庭仕事から夫に任せてはいかがでしょう。好きな女性に頼りにされて、嫌な気持ちになる男性はいません。妻が苦手なことを、夫にお願いするというのも、夫を家事に参加させやすくする1つです。
玄関脇に、庭仕事で必要な道具をまとめておける収納をつくりましょう。釣りやアウトドアが趣味な夫なら、汚れやすい道具たちは一緒にここへ片付けておけるくらい、大きな収納を確保するのも良し。イメージとしては、玄関脇のウォークインクローゼットです。夫の好きなものを一緒に片付けておくことで、その場所の汚れが気になり、庭仕事の道具を使用後に綺麗に保とうとする習慣も生まれます。
玄関脇にスペースがない場合には、庭の一角に倉庫を設けることから始めても構いません。今まで庭仕事を行うときに使っていた道具を用意し、単純でわかりやすいように夫に収納をお願いすると良いでしょう。人はやはり準備されたものよりも、自分で収納したほうが使い勝手良く感じるものです。庭仕事は身体を動かすことにつながるので、夫の運動不足解消にも一役買ってくれるかも。もし夫が庭仕事に楽しさを見いだせたら、家庭菜園をつくるなど次のステップに進んで、庭仕事をライフワークとするのも良いですね。
加齢にも対応できる平屋空間
「頻度が少なくて済むように」のなかで、2階建て住宅を平屋にしてしまうのも1つの手段というお話をしましたが、これは家事の面だけでなく、加齢とともに老いていく身体のことを考えたときも有効な手段であるといえます。躓きや転倒・転落を防止するのはもちろんのこと、幅の広い廊下と生活に必要不可欠な居室がすべて同じ階にあるようにすれば、室内で車椅子を使うようになっても安心です。
車椅子での生活を念頭において注文住宅で平屋住宅の設計したり、今まで使ってきた階層住宅の1階を使い勝手良くリノベーションを検討したりする場合は、戸はドアノブを扱うタイプではなく、引き戸を。戸のレール部分には、周囲の床材とフラットになる配慮をしましょう。
より快適な平屋住まい
また「平屋にすると空間を狭く感じてしまうのでは?」と思う場合には、壁掛け式の家電を取り入れることをおすすめします。例えばテレビやオーディオを壁掛けにすることで、それぞれの台が必要なくなるので空間が広くなるのです。不要になる元々のテレビ・オディーオなどの台は売ってしまい、壁掛け家電を購入する資金に充てましょう。台がなくなることで、掃除しなければならない場所を減らすことができます。
平屋にすると採光・通風が悪くなると考えられがちですが、窓は垂直方向以外にも確保できるものです。上階がなくなったぶん、天窓は付け放題!空を見ながらの生活や、上から降り注ぐ光はなかなか良いもの。平屋の中央にウッドデッキのある中庭を設けるのも、平屋の設計において採光・通風確保の常とう手段です。
また三重県では、リフォーム工事に対して県が補助金を出す支援を行っています。あなたの住宅が木造住宅で、なおかつ耐震補強工事を行うならば受けることのできる支援です。